私がニケタンに来てから3日目に、ユキが来た。滞在を決める前に、このアシュラムがどんな感じか見たいし 滞在中の日本人の意見も聞きたいとニケタンに頼み、お昼を食べてったらどうかと提案されたそうだ。旅が長いだけあってしっかりしている。確かに12日分の費用を前払いするのだから最もだ。
食堂で早速意見を聞かれた。私はまだ入ったばかりだけど 気に入ってるよと答えた。私の左にはサオリが座っていた。
サオリはヨガを学んでいて、インドの宗教や文化に詳しい。ヒンドゥも少し話せてハッキリした物言いのきりっとした女性だ。彼女は翌日ニケタンを出て、少し離れた所に安い部屋を借りる事になっていた。
ユキは私の横で食事をしながらサオリに話を聞きつつ ニケタンの短所探しをしていた。旅費をギリギリまで切り詰めた旅を続けると 値段交渉に使うネタ探しを ついしてしまうものだ。しかし、ユキはそこに皮肉を取り混ぜていた。これがサオリの鼻についた様だ。サオリはそれでも有効情報を与えてはいたが、時々ユキの甘えたようなジョークのようなアホ発言に そんな事言うならここじゃなくて1000ルピーの部屋でも何でも泊まればいいじゃない!と小ギレしていた。ユキはそれを苦笑いで受け止めていた。
私は2人の間で妙~な感じになっていた。
結局、サオリの入っていた部屋にユキが入ったのだが 何日か姿が見えなかった。ユキは翌日から熱が出て寝込んでいたらしい。この施設の責任者はドクターでもあり、すぐ診て貰ったらしいのだが 貰った薬を飲まなかったそう。解熱剤だっていうけど何の薬か分からないからっと。そのうち下痢が始まった。彼女はまた 町の医者に連れて行ってくれるようニケタンに頼んだ。診断は 熱が無いので様子を見てとの事。下痢止めを貰っただけだった。彼女は、町医者は普通のアパートみたいな所で ニケタンのボスの部屋(診察室)と変らないんだもんと不満を言った。彼女が何を望んでいるのか良く分からなかったが、どうも病院の様な施設で白衣の医者に診てもらいたかった様だ。
ニケタンのボスは彼女にイラついていた。彼女も彼にイラついていた。彼は彼なりに色々してやっていた。しかしユキはまず、彼を信頼していない(こういうのは明らかに伝わる)し、細かいニュアンスが相手に通じてない。はっきり不満も言っていないし 自身、どうしたいのかが分かっていない。ボスは 彼女は英語が解らない!という。そんな事はないんだけど はっきりと理解できてない部分を想像で補って解釈している節があった。生理になった事も伝えられてなかった。5日間なかなか調子が良くならないので 今度は大きな病院に連れてって欲しいと頼んでいた。しかし 旅行保険の会社に連絡出来ないので行けないの、と言っていた。なんで?と聞いたら、保険会社はシンガポールにあって インドからのコレクトコールの仕方が分からないからだと。そこまで切り詰めるのか・・・。
ある日、ジョンがアメリカで開業医をしていると聞いたので ユキの事を相談した。ジョンは常備していた下痢止めの薬を持って、ユキの部屋を訪れた。彼は物柔らかに ゆっくりと丁寧な英語で 脈を取り、診察した。インドの下痢についてひと通り説明をし、抗生物質をあげるから沢山水分を摂るようにと言った。ユキは彼を信頼したようだ。もらった薬を素直に飲んでいたが、エレクトラルという経口補水塩がまずくて飲めないと言っていた。でも飲むべきだった!
翌日、今度は吐いて 食事はおろか水も飲めなくなった。
ラフティングに行った日の夜、ユキの部屋を訪れると 彼女はベットでぐったりとしていた。これはマジでやばそうだと思い、病院に行くよとユキを起こす。ジョンを呼んで相談すると、完全に脱水症状だから点滴を打ってもらうといいとの意見。ニケタンのスタッフに話をして車を用意してもらい 大きな病院に連れて行った。ニケタンのボスは私に頼んだよ、と声を掛け、背の高い重臣スタッフがあとから病院に来てくれた。
ERで、夜10時過ぎに医者と面接。症状を告げると、肝炎の疑いがあるとの事。予防接種は受けてないので血液検査をして、点滴を2本打ってもらう事になった。診察料と検査料を別々の支払い所で立替え、点滴液と針やチューブ、針を止めるテープなどを薬局で買って来てあげる。彼女はキャッシュレスで診察をしたかったみたいだが、医療費なんて 後で保険会社に請求すればいいのだ。彼女は顔が黄色く、白目にも黄疸が出ていた。ぐったりしながらもインド医療の衛生面に不満を言っていた。私にはもうそういう事は聞こえなくなっていた。針を刺して採血してから点滴チューブを繋いでもらう。ユキの身体は生理食塩水をゴクゴクと飲み干している様だった。そのうち彼女は眠ってしまった。
長身のニケタンスタッフは、私の夕食にとサンドイッチを持って来てくれた。ボスが奥さんに作らせたそうだ。彼自身の奥さんも私に夕食を食べに来るようにと言ってるそうだ。ありがたいですが、サンドイッチで十分です、奥様にお礼を言って下さいねと丁寧に断り 彼には自宅に帰ってもらった。ユキを独り置いて食事しにいくわけにいかないもの。待ってる間、他の患者の付き添いの人や 看護師とお喋りして過ごした。ERだけあって、重症な人が多い。腎臓疾患が多いみたい。
私もとりあえず泊まりを覚悟してはいたが、点滴が終わるとユキは意識もハッキリして 帰りたいと言った。医者に聞くと、明日また来なさいと帰宅を許してくれた。早速ニケタンのスタッフ、パルモスに電話を入れ、これからタクシーで戻るので門を開けておいてくれと頼み、帰宅した。時間は12時過ぎていた。
長い1日だった・・・・。
[1回]
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COMMENT
無題
インドを元気に旅するほどタフでない模様…(^_^;)
中国やタイで当たってるんじゃインドは遠い(苦笑)
さすがに肝炎発症したことはないですが。
無題
彼女は長い間独りで頑張りすぎたんじゃないかな。
もう日本を発ってから1年位経ってる様だったから。
休む必要があったんだと思います。
やっぱり、病気になったら降参するしかないよね。
気合ではどうにもこうにも。
ましてウィルス性の物はねぇ~。