S君が発ち、私は320ルピーのシングルに移った。
初めて洗濯をした。バケツに水を溜め 石鹸をこすりつけ足でジャボジャボ踏む。インドの服はなんでこんなに色落ちするんだ?水彩絵の具の筆を洗う水バケツを思い出した。青と黄色で緑~とか、白と赤で苺ミルク~とかやったもんだ。しかしインドの服は乾きが早い。
暑いので北に行こうか迷った挙句、次はタジマハルだけ見て北へ向かう事にした。旅行会社でアーグラー行きの夜行列車の手配をしてもらう。今回は3B。出発までまたフラフラする。竹笛売りに出会い、竹笛を見せてもらった。中々音が出ない。同じGHにいたスイス人女性が来て 一緒に吹きまくる。昨夜は彼女と夕食を一緒に取った。彼女はブティックを持っていて、永く付き合った人と別れたばかりだそうだ。フランス人女性が営むボランティアグループに入り、2週間滞在して その後3泊このGHを手配してもらったそう。私の払った料金を聞いて、信じられないっと固まっていた。これからまた2週間インドを楽しむ予定で リシケシュでまた会うかもね~と話した。
竹笛を一本手に入れた。インド人が竹笛を買ったのか?と声をかけてきてチャイをご馳走してくれた。そうだよ、音が出るようになったんだとしばらく吹いてみせると もういいと言われた。
GHを発つ時、お世話になったレセプションのおじさんが出てきて 私の両手を取り、真剣に目をじっと見つめた。なんだなんだと見つめ返していると おもむろに手を上下に振り始めた。まるでやっせっせ~だ。5分ぐらい見つめ合いながら やっせっせ~を続けた。彼の目は落ち着いていてとても奥深い いい目だった。魂のふれあいって言うんだろうか、静かで心地よい5分だった。最後に君の幸せと旅の安全を望んでいると言ってくれて心から感謝した。
駅までのリクシャーはトロトロしてた上、道が工事中でアスファルトがひっくり返っていた為 途中で降ろされ歩かされたりした。出発時間が近付いてたので焦ったが間に合った。ホームで若い日本人男子5人に会った。インド人ガイドを付けていて彼らと一緒に列車を待った。結局2時間遅れ、直前にホームが変わってバックパックを背負いながら階段を走った。アナウンスはヒンドゥなので彼らと会ってなかったら乗り過ごしてた所だった。彼らはもちろん2Bだったので乗車時に別れる。
同じコンパートメントにオランダ人の若いカップルがいた。どこかのガートで見かけた二人だった。二人とも美男美女なのに なんか沈んでいて、彼女は苦しそうにさえ見えた。他にはインド人の家族5人、父・母・小さい息子におばあちゃん。ベットは3段3段に通路側に2段あるので8人。ひと通り挨拶して列車が動き始める。
インド人お父さんがインドはどうだ?と聞いてきた。インドは好きよ、色んな言葉の色んな人達が混ざっててとっても面白い、と答えた。オランダ人男子は 僕達もインドは好きだよと言いながら紳士的にではあったが 細かい疑問を投げかけ、議論が始まってしまった。ヨーロッパインテリ特有のへりくだった相手批判だ。ジェンダーから始まり、宗教、結婚や家族のあり方、身分差別にまで触れていった。私は途中で何もいう事が無くなって抜けた。比較する事自体が間違ってるもの。
オランダ人の彼は 父親が大工で、自分は大学院でソーシャルワークを勉強している。両親は離婚しているが同居していて、母は父の友人と再婚し小さい兄弟とみんなで同居しているそうだ。親が大工でも(ああ、キリスト的優越感!)子供は望めばいくらでも教育を受けることが出来る自由があり 好きな職業に就ける。あなた達は出来ないでしょう、と批判する。
インド人は興奮して(もちろん紳士的に)それは違う、私達も職業は何でも選べるんだ(公的にはね)。そしてヨーロッパの家族のあり方を批判し返す。そんなの家族じゃないじゃないか、君はかわいそうだ、と。オランダ人は いや僕は幸せだよと、“愛”と“自由”という武器を使う。親が離婚しても二人とも僕を愛してくれているし、家族とは愛で繋がっているものだ、形じゃない。逆にあなた達のように 親、家族が決めた相手と一生を共にする事は難しくないのか?それは足かせにならないのか、生活に問題はないのか?相手を愛せるのか?と聞く。全く問題ない、とインド人。なぜなら同じ習慣、同じ経済レベルの家族から相手を選ぶからで、もちろん妻を 家族を愛している、と。君達にとって家族とはなんだ?と、歳を取ったらどうするんだ?と聞く。(ソ-シャルワークだもんな・・・。)
オランダ人は これはあくまでもお互いの文化の単純比較であって相手を批判する為の話し合いじゃないんです、そうでしょ?という。インド人は まぁそうだ、と受け入れる。そこでオランダ人彼女が 教育について口を出し始める。教育がいかに大事か、教育によって社会がいかに変わるかをトクトクと話す。彼はそんな彼女を愛おしそうに気遣う。
そこからがまた延々と長かった。差別については捉え方が全く違っていてまるで水と油だ。
インド人お母さんは英語が解らないのか、解らない振りをしてるだけなのか、女が口を出すことは宜しくないからか、一言も口を出さなかった。
早々とベットに上がり、彼らの話を聞いていたが 理解するという事は受け入れる事とは違うんだな~と思った。
この中で幸せなのは子供だけだ~。
彼らはこの話題以外は 仲良く親密そうにしていた。
それがとても嘘っぽくて diplomatic でいやらしく感じた。
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