首の高さ一杯に掛けられた何枚もの白いスカーフを 一枚一枚畳んでビニール袋に入れる。隣では若いインド人が相変わらず声を上げて笑っている。私の中の“しんみり”が、彼の底明るさに負けてしまい、つい笑ってしまった。もう!インド人っ!
空調は最適で揺れも少なく完璧。一息つくと寝る体勢に入る。乗車人数も少なく、すぐ眠ってしまった。明け方、突然ブワンッという大きな音で目が覚めた。なになに? 意識の焦点が合わない。あれ?外が動いてない。バスは路肩に止まっていた。車内が静かにワサワサしてドアが開いた。外から人が顔を出してヒンディで運転手と何やら話し、インド人が降り始めた。まだボケた頭で 何?どうしたの?と周りに聞くと パンクしたから降りるよ。降りてどうすんのよ?ハイウェイのど真ん中じゃない、危ないよ! 代わりのバスが後ろにいるんだ、乗り換えるよ!うっそ、マジで・・・・!?
これ、確か 一番高いVOLVOのデラックスバスじゃなかった?
降りて、バスの腹の荷物室から自分のバックパックを引きずり出す。これ私の?と見紛う程 真っ白に汚れたバックパックを背負い、言われるまま乗り換える。すぐ横を高速車がビュンビュン通り過ぎる!危ないっ!乗り換えたバスはランクがひとつ下がって シートがぼろだった。さっきのバスにはいなかった人達がぐうぐう寝ていた。
バスチケットを買う際、私はこのバスに乗りたかったのだった。安くてそこそこ快適だからだ。チケット売り場のおっさんは 席が一杯だって言っていた!VOLVOはいいぞ~、スーパーデラックスだからっていう甘い言葉に負けたのだった。もうインド最後だからなぁ~、奮発するかって。くっそ~!こんなに席空いてるじゃんか。ここでもまんまと騙されていたのだった。
しかし・・・・早朝すぎる。怒りが眠気に押さえつけられてしまう。文句を言っても置いて行かれるのは嫌だし、とにかく眠りたかった。
それから約1時間後、バスはオールドデリーに着いた。
最後の最後で急に汚れたバックパックを担ぐと すぐさまリクシャーワーラーが寄って来る。どこ行くんだ?ニューデリー。300ルピー。無理! そんなやり取りをしながら歩く。すれ違うリクシャーたちが次々声を掛けてくる。300から250、250から200、150、130まで下がった。でも頑張って地下鉄の駅まで行けば30ルピー位で行けるのだ。もう少し頑張って場所を変えると 乗り合いで100で行ってくれるリクシャーを見つけた。ほっ。
一緒に乗ったのはビジネスマン風の若い男性。彼にメインバザールはどこから始まるのか聞いたら、知らないと言った。その一言には知りたくもないっていう軽蔑の感じが含まれていた。確かに貧しい所だけど 別にいい。
ニューデリー駅に着いて降りた時、彼は運賃を80しか払っていなかった。私は、100ルピーを喜んで払いますよとビジネスマンとリクシャーワーラーに言った。そんな事言う必要は全く無かったんだけど、ついね。
駅からメインバザールに入っていくと アスファルトがひっくり返っていた。通れたもんじゃない。端っこを歩いていくしかない。30cm位の塊が山になって転がっている。車はもちろん入れない。山あり谷ありの道を人間と牛が歩く。チャイ屋やジュース屋も商売道具のリヤカーをガッチャンガッチャンさせて通る。滅茶苦茶だ。
道端に腰掛けて、頑張っていたチャイ屋さんのチャイを一杯飲む。
隣に座っていたタバコ屋さんのタバコ。
前に泊まった所にチェックインする。約1ヵ月前より200ルピー安くなっていた。ハイシーズンは終わったという事だ。しかしデリーは暑い!山から来たからその違いは大きい。常に暑さと騒音と埃とインド人で息苦しい。シャワーを浴びておいしいチャイを部屋に持ってきて貰って一服する。出発は明日の夜だ。まだまだ時間がある。
近所を歩くとお祭りをやっていた。綺麗にお化粧した子供達が集まって伝統音楽を聴いていた。
夕食に近くのレストランでベジタブルターリーを食べていたら、日本人の男の子と女の子が入ってきた。彼らはカップルではなく、旅の途中で知り合った者同士だった。同席しても良いかと言うので一緒に食事をした。彼はこの後、デリーから空路で南アメリカへ飛ぶそうで、彼女は南アメリカ経由でエジプトに飛ぶそうだ。二人とも長期旅行で色んな国を回っていた。2人ともインドに疲れ気味だった。他の国も見ているのでどうしても比べてしまう。インドはそんなに良くないなぁ~と言っていた。私も以前ヨーロッパを半年間周ったが 一つ一つの国をじっくりと見ていない為、比較して見劣りする国は今になってみると記憶が薄い。2人にどの国が一番良かった?と聞くと、彼はタイ、彼女はラオスだった。みんな同じ事を言う。
食後2人はネットカフェに行ってチケット出さなきゃと言ってた。私はそこで別れて散歩した。道端でインド人の女の子がヘナタトゥをやっていた。お祭りだからだろう、前はタトゥ屋なんて見かけなかったぞ。とってもやりたかったが、明日出発だから出来なかった。女の子に写真撮ってもいいか尋ねてから撮らせてもらった。
下書き無しで 直接肌にへナチューブを当てて描いてゆく。図柄も素晴らしいが技術も素晴らしい。まるでケーキのデコレーションをしている様だ。そして彼女の浅黒い肌が これまたとてもなまめかしかった。
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